動き始めたビッグデータビジネス | 青山システムコンサルティング株式会社

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 ビッグデータ元年と言われた今年。
 新聞でも数日に一度はビッグデータの記事が掲載されています。マーケティング分野での利用が先行していましたが、最近では「ビッグデータで野菜の収穫を正確に予測する」といった事例もあり、より広範な分野での活用が始まっています。

 「うちの会社にビッグデータと言えるようなものはない。自分達には関係のない話だ。」とお思いの方もいらっしゃるでしょう。

 しかし、ビッグデータ活用は自社のデータだけで行うものとは限りません。様々な情報を蓄積している大手企業がビッグデータの販売を開始または検討しており、お金を出せば自社に役立つデータが手に入るようになりそうです。

 ここであるニュースを思い出される方もいらっしゃるでしょう。

 今年(2013年)の6月末、JR東日本がSuicaで収集した乗車履歴データの販売を開始しました。しかし、「個人情報保護の観点で問題があるのではないか」という指摘や反発が多数寄せられ、わずか一ケ月後の7月25日には販売中止という事態になりました。

 この事例において、JR東日本は以下の対策を取っていました。

・提供するのは個人情報ではなく、匿名化したデータ
・利用者は申し入れればデータ利用を拒否できる
・提供先で他のデータと紐づけたり、目的以外の利用ができないよう契約で明文化

 にもかかわらず大きな反発を招いたのは、以下の理由があげられます。

1)Suica利用者への事前説明がなかった
2)当初は利用拒否の窓口を周知していなかった
3)データの精度が不必要に高く、匿名化が不十分ではないかと懸念された
 (例えば、乗降時刻は時分秒まで保持していた)
4)提供先によるデータ流用、悪用を防ぐための具体策が不明瞭であった

 上記1,2は企業側の失策であったとして、3,4についてはどのように対処すればよいのでしょうか。実は、データをどのように匿名化すればよいのか、匿名化すれば本人確認をとらずに第三者提供してよいのか、といったところは現在の個人情報保護法では明記されておらず、グレーゾーンとなっています。

 このような現状に対して、国も手をこまねいているわけではありません。
 ビッグデータは大きなビジネスチャンスです。総務省の情報通信白書では小売業や製造業、運輸業などで新たにビジネスが生まれ、年7兆7千億円の経済効果が見込めると試算しています。
 また、欧米では個人データ保護のルール整備が進められており、これに歩調を合わせられなければ、個人データ保護が出来ない国として、関連するビジネス領域で排除されかねません。例えばEUでは個人情報保護を重視しており、企業が域内の個人データを指定国以外に移転することを厳しく制限しています。日本はこの指定国に入っておらず、データを域外に出さないようにEU内に専用データセンターを置いている企業もあるそうです。

 政府はビッグデータの利用に関する法律の整備を開始しました。
 IT総合戦略本部の下で原案を作成、2014年半ばまでに制度の詳細を詰め、個人情報保護法改正案として2015年の国会提出を目指すそうです。法整備の概要は以下の通りです。

・匿名化した個人情報なら本人の同意がなくても第三者に提供できるよう定め、ビジネスなどでの活用を促す
・個人を特定できないよう技術的な措置を事業者に義務付ける
・提供を受けた事業者が個人を特定したりデータを他の事業者に渡したりすることは禁じる
・消費者が利用拒否の意志を示せば除外される仕組みの運用条件も明確にする
・運用が適正か監視する第三者機関を設け、消費者のプライバシー保護への不安を和らげる措置を講じる

 この法整備が進めば、企業のビッグデータ販売におけるグレーゾーンが解消され、ビッグデータ活用の追い風となるでしょう。また、消費者が企業に抱く個人情報乱用への懸念も和らぐのではないでしょうか。

 売り手側の企業も法整備を座して待っているわけではなく、JR東日本の件の後も、ビッグデータビジネスの動きは止まっていません。

・ドコモは契約者の位置情報を利用し、特定地域の人口変化のデータなどをまとめたレポート「モバイル空間統計」を10月から販売。
・Tポイントを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は年内にも会員の購買データを外部の企業に販売。
・ヤフーとアスクルは共同で運営する個人向け通販サイト「ロハコ」の購買データを年内にも無償で提供。

 このような外部データを分析すれば、自社のデータだけでは見えてこなかった消費者のよりリアルな実像を浮かび上がらせることも可能です。それを基に新たな商品開発や、販売戦略の検討・見直しなどが出来るのではないでしょうか。
 また、いつどこにどのような人たちがいる、何を買っているといったことがわかれば、より精度の高い商圏分析が可能になるでしょう。

 新事実を発見したり、より正確なデータ分析を行うには、自社データだけではどうしても限界がある場合があります。今後は外部データをうまく活用することも視野に入れてはいかがでしょうか。

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2013年12月17日 (火)

青山システムコンサルティング株式会社

山口 晃司