コラムカテゴリー:ITコンサルティング
「今、何を話しているのだろう?」「この言葉は何を指しているのだろう?」
会話や文書でのコミュニケーションで使用された言葉に対して、このように思ったことはありませんか?
また、それらの言葉の意味を確認せず、自分の定義を当てはめて理解してはいませんか?
なぜ、言葉を定義することが重要なのか。
私自身が参画したプロジェクトで発生した、下記の事例を基にご説明いたします。
◆背景(プロジェクトの概要)
・B2C(Business to Consumer)の事業を行う会社(以下、A社)は、度重なる吸収合併により、社内のシステム開発において、運用を見据えたプロセスが整備されていない状態であった。
・A社はIT運用業務の一部を他社(以下、B社)に委託しているが、B社が受け入れ困難なシステムが多数存在している。
・B社へスムーズに委託可能な、運用を見据えた開発プロセスを整備することが、プロジェクトの目的である。
・既にITIL(※1)に準拠した運用を行っているB社と協力し、システム開発プロセス整備にむけて、プロジェクトはスタートした。
※1:Information Technology Infrastructure Library(ITIL):英国商務局が、ITサービス管理・運用規則に関するベストプラクティスを纏めたガイドブック
◆課題(ToBe像の策定段階で問題が発生)
A社はB社に運用業務(サービスメニュー)の洗い出しを依頼したが、B社の成果物は、A社にとっては洗い出し項目が足りないように思えた。
◆原因(ITILの認識違い)
A社はITIL(v3)に準拠した考え方であり、B社はITIL(v2)に準拠した考え方であった。
この状態で会話をしていたことにより、認識の不一致が発生したことが原因であった。
◆対策(言語の共通理解)
言葉の定義および意味を双方に共通の理解とすることで、認識のズレを解消した。
このコラムを読んでいるあなたも、似たような経験をしたことがあるのではないでしょうか?
事例のITILのように、しっかりと定義されていて、共通に理解できると思える言葉でも、認識のズレが発生します。
認識のズレを生まないようにする対処の例としては、以下の2点が効果的だと考えます。
・会議を始める前に「私は○○という言葉を××と定義します。」という前置きを入れる。
・言葉の表現をより具体的にする。
※例:事例のように日々の運用業務(サービスメニュー)の洗い出しを依頼する場合は、
下記1→3のようにより具体的な表現を使用することで、認識の齟齬が防げます。
1.「サービスメニューの洗い出し」
→2.「ITILに準拠したサービスメニューの洗い出し」
→3.「ITIL(v3)に準拠したサービスメニューの洗い出し」
話し手は、自分たちが使用している言葉は一般的であると思い込みがちです。そのため、相手が理解できると考え(相手に理解してもらうことへの配慮不足)、簡潔な言葉を使用してしまいます。
簡潔な言葉を使用すると、意味があいまいな表現になり認識の齟齬が発生する可能性があります。プロジェクトの現場における認識の齟齬は、重大なミスや手戻りの原因となり、プロジェクト遅延などの悪影響を与えます。
意味を明確にした言葉を使うことで、スムーズなコミュニケーション、明確な合意の形成が可能となり、それらがプロジェクトを成功に導く土台となります。
もし、認識のズレを感じた際は、言葉の定義に意識を向け、いつも使用している言葉に認識の齟齬はないか?という点を見直してみてはいかがでしょうか。
2015年10月14日 (水)
青山システムコンサルティング株式会社