IoTの先に来るもの | 青山システムコンサルティング株式会社

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 昨年はあらゆるものがインターネットにつながる“モノのインターネット(IoT)”元年だったと思います。
 ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、これまでも民間企業のコマツではKOMTRAXといわれる自社の建設機械の稼働時間と位置をセンサーやGPSで把握してタイムリーな保守点検やメンテナンスをお客様に提供しています。これらのIoTによるB2Bのサービスは徐々に浸透し始めましたが、B2Cへのサービスはまだこれからのようです。
 しかしすでに欧米では、一般消費者向けの製品のIoT化が始まっています。たとえばフランスでは、コネクテッド・サイクル社というベンチャー企業の、コネクテッド・サイクル・ペダルという自転車盗難防止用のペダルが発売されるそうです。

■ コネクテッド・サイクル・ペダル
 そのペダルにはセンサーが付けられていて、止めてあるはずの自転車が移動したり、振動したりすると、その情報がクラウドのサービスを経由して持ち主のスマートフォンのアプリに送られて警告を発するそうです。不幸にして盗まれてしまったら、ペダルに仕込まれたGPSで追跡して場所を知らせるようになっています。
 そこまでなら通常誰でも思いつくアイデアですが、そのセンサーは泥棒に簡単に取り外されたり壊されたりしないように、目立たないように取り付けられている必要があります。また、走っているときの振動や水漏れなどにも耐えられなければなりません。そうすると、充電のために簡単に取り外すことができたり、端子が見えるようなところにあっては都合が悪くなります。さらに異常を検知したら即座に通知しなければならないので常時インターネットに接続されていなければなりません。
 コネクテッド・サイクル・ペダルは一般的な大人用の自転車に取り付けることができ、自転車を漕ぐことによってペダル内部の発電機で発電し蓄電されるので、モバイル通信機能とGPSのために外部から電気を供給する必要がありません。さらに特殊な工具でなければ、ペダルを取り外すことできません。
 このコネクテッド・サイクル・ペダルには盗難対策用以外にも色々な機能が装備されておりIoTのお手本のような製品です。
 東京都内では自転車の盗難件数は年間5~6万件と言われていますが、欧米の大都市においてはその数十倍の盗難があると言い、いかにも需要がありそうです。

■IoT発展のために
 IoTの本質はあらゆるものをインターネットにつなげることでデータをうまく利用してサービスを提供することです。
テスラモーターズの電気自動車「モデルS」は、持ち主がスマートフォンのアプリを使って離れた場所から航続可能な距離や充電状況を確認したり、充電完了の通知を受け取ったり、自動駐車した場所をGPSによって確認したりすることができます。航空エンジンの販売とメンテナンスを航空機メーカーに提供していたGEがエンジンにセンサーを付けてデータ収集できるようになったことで、コマツのようにサービスビジネスに進出したことなども有名な例です。
 しかし、いずれのIoTも固有の企業のデータの中でクローズしたサービスです。IoTをさらに発展させるためには、これらのさまざまなデータを一企業の中でクローズすることなくオープンにして広くデータ共有することです。
 このIoTに関してはまだ通信やセキュリティーおよびセンサーデータの標準化などの国際規格はまだなく、各社や各種団体で独自に規格化が進めてられています。
 現在、インターネットには100億から150億個のモノがつながっていると言われており、その数は東京オリンピックが開催される2020年には300億から500億個になるとも予測されています。
 これらの膨大なデータを有効利用するためには国際規格を作ることが重要です。このため、日本の総務省が国内の主要なメーカーや通信会社などの有力企業200社あまりに参加を呼びかけ、今年(2016年)からIoTの通信規格の開発を始めることになりました。これからは欧州委員会や米政府とも早い段階から連携し、新規格を国際標準に育てる動きがあるようです。
 これが実現すれば日本はIoTに関する国際標準で主導権を取り、世界の情報技術の先導者になることができるのではないでしょうか。

■ IoTの先に来るもの
 IoTの国際規格化が進めば、たとえば体に付けた様々なセンサーで心拍数、体温、血圧、消費カロリーや食事の写真をクラウドにアップすることでコンピュータの人工知能が体調を調べ、「最近摂取カロリーが高いので、炭水化物を控えて運動量を増やしてください。」などと指導してくれる時代が来るかも知れません。
 さらにDaaS(Data as a Service=データを借りて利用する)などのサービスが充実してくれば、さまざまなデータを利用したIoTのサービスがより一層進展していくものと考えます。
 このIoTから得られるビッグデータを人工知能で分析することにより、たとえば電力会社では消費電力の状況と気温や天候等のデータから自動的に消費電力量を予測し、各発電所に必要な発電量の指示を出すことも可能になるでしょう。人間はこれらのコンピュータから出された指示により発電を行うようになるかもしれません。
 IoTが進展していけば人類がコンピュータの指示で健康維持を行ったり、働いたりする時代が来るのでしょうか?

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2016年01月12日 (火)

青山システムコンサルティング株式会社

谷垣 康弘(元会長)