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日本とドイツにはいくつかの共通項があります。第二次世界大戦では同じ枢軸国に属し、同じく敗戦しました。その後奇跡的な復興を果たし、工業立国、輸出立国として世界で大きな役割を果たしてきました。共にまじめで職人気質な国民性。両国の面積もほぼ同じだそうです。
このようなことからドイツに親近感を抱いている方も多いのではないでしょうか。
しかし、ドイツの仕事に対する考え方やワークスタイルに関する記事を読んでみると、どうやら共通項ばかりではなさそうです。今回は私が興味を持ったことについてご紹介したいと思います。
1. 標準化
ドイツの企業は、徹底して業務標準化を推し進めます。同業のライバル企業同志であっても共通した業務であれば手を組んで標準化を進めるそうで、その範囲が日本企業よりはるかに広い。
例えば、自動車業界では「自動運転機能の試験方法の標準化」といったプロジェクトが進められています。その分、各社は「独自の強み」「他社との差別化」といったところに注力することができます。とても合理的な考え方であると思います。
業務標準化は「言うは易し行うは難し」です。以前私は複数社による共通業務のシステム統合プロジェクトに参画したことがありますが、各社の思惑や主張がなかなかまとまらず、プロジェクトは難航を極めました。
基幹システムパッケージ/業務パッケージソフトで有名なSAPもドイツの企業です。Wikipediaによればヨーロッパ最大級のソフトウェア会社とのこと。このような基幹システム/業務パッケージソフトが発展したのも、業務を標準化するのが当然という考え方があったからではないかと想像します。
2. 残業
「ドイツには残業がない!」
という俗説もあったようですが、実際にはヨーロッパの中では比較的残業が行われる国のようです。
しかし、日本と比べればやはり短い。経済協力開発機構(OECD)の統計(2012年当時)によると、日本では就業者1人当たりの1年間の平均労働時間が1745時間、これに対し、ドイツは1393時間と約20%も短いですね。
- 「1日の労働時間は10時間を超えないこと」
- 「6ヵ月平均して1日あたり8時間を越えないこと」
このような法律で労働者は保護されているそうです。
思い切っていると感じたのは、これらの法律を破ると企業や上司個人が行政から高額な罰金を科せられたり、懲役刑になることがあるそうです。これなら企業も上司も必死になって残業をさせないようにしますね。
3. 品質
品質イメージ調査「MADE-IN-COUNTRY-INDEX(MICI)2017」(統計サイト スタティスタ)によれば、世界の消費者に最も信頼されているのはドイツ製品なのだそうです。有名な高級車やライカ等のカメラブランドもあり、これはうなずける結果に思えます。
しかし、実際にドイツに住んだ日本人の印象としては、たしかに高級品の品質が素晴らしいが、手ごろな値段となると良いものは少ないということのようです。Webの記事では日頃手にする生活必需品は日本のほうが品質が高いという感想がありました。
私はカメラが好きです。ドイツのライカは機械の精度・質感にすぐれ憧れではありますが、あまりに高額。実用的でコストパフォーマンスに優れているのは、日本製のカメラであると思います。
しかし、世界中で高級品を売ることができるドイツ企業のブランド力には魅力を感じます。手をかけるところは思い切りかける(その分高額に)、そうでないところはそれなりに、という使い分けが上手いのかもしれません。
何事も細部にまで拘る日本人の気質は素晴らしいのですが、
- 「ブランディング」
- 「大量生産・大量消費から少量生産・少量消費へシフト」
- 「日本国内の人口減少、マイナス成長」
- 「世界市場で勝つ」
このようなキーワードを考えると、我々はドイツに学ぶべきところがありそうです。
最後に
今回は主にドイツの良いと思える面を紹介しました。物事には光と影もあり、ドイツにもよろしくない面はあるのであろうと思いますが、政治・民間ともに「働き方改革」を進めようとしている日本にとって、今後の働き方を考える上でのヒントが隠されているように感じました。
2018年05月21日 (月)
青山システムコンサルティング株式会社
山口 晃司