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はじめに

近年、システム投資への意欲が高まっています。しかし、システムを無事リリースしたものの、システム投資に対して期待する効果が得られていないケースが少なくありません。そこで、今回はシステムリリース後におけるシステム投資の成功を阻害する要因とその対策を考察しました。

部門間の溝が投資対効果を抑制する

まずはシステム投資の成功とは何かを改めて確認します。投資の成功は投じるコストに対して得られる効果が期待値を満たすことでしょう。システム投資の場合には、コストがシステム構築や導入に関連する初期費用やランニング費用などです。一方、期待する効果は新システムを活用した業務活動を通して、効率化や顧客満足度の向上、売上向上することなどが該当します。つまり、システムそのものが投資の効果をもたらすのではなく、システムをいかに活用するかによって投資の成果は左右されます。そのため、システムリリース後にシステムの貢献度と活用状況を評価・改善することがシステム投資において重要です。

しかし、実際にはシステムリリース後に情報システム部はシステム利用部門へ口を出すことはご法度とされている企業文化が多いです。また、システム利用部門も施策に対して情報システム部に口を出されることを嫌うことが多いです。このように、部門間で溝があることがシステム投資の成功を阻害する一つの要因になっています。

ただし、この溝は一朝一夕に解消できるものではありません。まずは、システムリリース後の評価を効果的に行える仕組みを整備し、情報システム部とシステム利用部門が議論できる場を用意することが必要です。ある企業でも部門間の溝がありましたが、システム投資における目標管理シートの作成を工夫することで、部門間の協力体制を促し、期待する投資効果を得られた事例があります。

部門間の溝を埋める目標管理シート

システムリリース後の評価を効果的に行い、部門間の溝を埋めるためには、目標管理シートの作成を工夫することから始めましょう。目標管理シートを作成する上で大切なことを3つのステップにまとめました。

期待する効果を部門ごとに測定可能な指標と施策までブレイクダウンする

システム投資を行う目的は経営戦略や経営戦略に基づく業績目標と一致しています。しかし、その目標だけでは各部門単位の目標値や施策との紐づけが明確ではありません。まずは、システム投資の目的から、その目的に達するために関与する部門と各部門が責任を持つ定量的な目標値と施策まで細分化をします。細分化する上での注意点は、細分化をした目標値と施策が企業の業績目標と因果関係があることです。また、細分化後の目標値を全て達成すれば、システム投資全体の目標値が満たされていることです。

ブレイクダウンした指標にシステム観点の評価軸を追記する

上記で部門ごとに細分化した目標値と施策に対して、達成するために必要なシステムとその活用方法、期待する目標値を追記します。このステップで大切なことはシステム利用部門が目標を達成するためには、情報システム部の働きかけが必要であることを認知してもらうことです。また、システムリリース後の評価時にシステム利用部門の実績評価だけではなく、情報システム部の評価を行える基準を設けることです。「施策に対してシステムの活用方法は妥当であったか」「システムを活用する上で、システムの構築方法に問題はなかったか」などを判断できるようにします。評価時には、情報システム部からも業務プロセスやデジタル技術の観点から改善策の意見を発言する責任を持つことです。

システムリリース後の評価タイミングを定める

最後にシステムリリース後にシステム投資の効果を評価するタイミングを定めます。タイミングは1回限りではなく、半期や1年間ごとなど定期的に実施するように計画します。また、どの周期で評価を行うかは、評価に必要なデータを集計する担当者や集計に必要な期間から定めましょう。いざ評価を行うときに評価するためのデータが出揃っていないことや、そもそもデータ集計方法が定まっていないことを事前に防ぐためです。

以上の3つのステップで定めた内容からシステム投資の目標管理シートを作成します。作成した目標管理シートに沿って定期的な評価を行い、システム利用部門と情報システム部の双方がシステム投資の成功に向けて評価・改善を実践しましょう。

※以下に目標管理シートの例を掲載。

終わりに

企業の成長にはシステムの活用が不可欠です。しかし、多くの企業では部門ごとの縦割りが強固なため、システム投資の効果を得ることは困難です。たとえ、企業内でDX部門などを新規で設立したとしても同様です。部門間の溝をなくす仕組みを整えてシステム投資に臨むことが大切です。紹介した3ステップが期待効果を得るシステム投資への一助になれば幸いです。

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2024年08月15日 (木)

青山システムコンサルティング株式会社

高柳充希