ずさんなITシステム導入計画で、業務にムダが生まれる

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2015年に出版した
『業務効率UP+収益力UP 中小企業のシステム改革』幻冬舎 (2015/9/18) より
書籍内のコンテンツをタイトルごとに公開いたします。

コンテンツの最後に、コンサルタントのコメントを追加しておりますので、合わせてご覧ください。


P.50~

第2章 場当たり的なシステム改修は、お金と業務の「ムダ」しか生み出さない

ずさんなITシステム導入計画で、業務にムダが生まれる

業務効率の改善を目的としたはずのITシステムなのに、なぜか、かえって業務効率が落ちているのではないかと思われる例がときどき見られます。

たとえば、チェーン展開をしている企業で、顧客データをITシステムに入力しているはずなのに、それぞれの店舗がネットワークでつながっていないために、顧客が店舗間を移動するときに、いちいち入力のやり直しをしている事例を見たことがあります。

あるいは、販売管理のデータをシステムの内部にすべて保存しているはずなのに、担当者が代わったときにきちんと引き継ぎができていなかったために、いつのまにかそのことが忘れ去られて、結局、出力された紙ベースの資料をいつも活用している企業の事例も聞いたことがあります。

もしくは、担当者がシステムへの入力をおろそかにしていて、何千万円もかけたはずのシステムが、いつのまにかまったく使われなくなったという例も、いくらでもあります。

また、在庫を管理するというまったく同じ業務を、システムで行えるはずなのに、ある部門ではエクセルで行い、別の部門では手作業で行い、システムを使っている部門がほとんどなかったという例も見聞きしました。

これというのも、ITシステムで何ができるのか、何のためにITシステムを入れたのかが、全社員にきちんと共有されていないからです。

目的を持って能動的にシステムを利用するのと、ただ指示命令を受けての作業とでは、その後の継続性が大きく異なります。

前者では使い続けるうちにシステムへの理解や利用度が高まりますが、後者では作業の意味がわからないからミスが続出しますし、そのうちにエクセルで計算したほうが速いなどと思われて、システムが使われなくなってしまうのです。

もちろん、仕事にはある程度の試行錯誤は必要です。せっかくシステムを導入したけれども、事業環境が変化したために、あまり利用しないうちに廃棄となる例もあるでしょう。

しかし、入念に計画をたててシステムを導入したのにもかかわらず、予期せぬアクシデントで駄目になるのと、ITへの理解が足りないまま、ずさんな計画でシステムを導入したためにムダになるのとでは、意味がまったく異なります。前者は偶然ですが、後者は必然です。

皆さんの会社で、システムが十分に利用されていないとしたら、その理由はどちらにあるでしょうか。

ITコンサルタントのコメント(2022年3月2日)

目的をもってITシステムを導入することや導入計画を立案することは、現在も変わらず大切なことです。
一方で、失敗を過剰に恐れ、入念に計画をたてることが目的になり、二の足を踏むようでは、相対的に競争力が低下してしまう可能性もあります。

クラウドサービスの進化によって、以前より手軽にITシステムを導入できるようになりました。
DXレポート2でも挙げられているテレワークやペーパーレス化などのデジタル化は、すぐに取り組むべきでしょう。
ただし、DXを成功させるためには、ITシステム全体の計画を立てる必要があります。
例えば、データの源泉となるアプリケーションとデータを分析するインフラを別のクラウド環境で構築すると、環境間のデータ連携が必要になります。
その構成自体が悪いわけではありませんが、計画を立てていれば、データ連携を主眼にして、統一の環境とする設計も検討できたでしょう。

ビジョンの策定から全体最適を考えるDXと、その基礎となる直ちに取り組むべきデジタル化をバランスよく推進していただくことを願います。


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