コラムカテゴリー:技術
■はじめに
2011年はWindows 7元年と言われており、企業におけるWindows 7への移行が加速すると予想されています。2014年のWindows XPの延長サポート終了をにらみ、Windows 7への移行を検討されている企業も多いのではないでしょうか。今回のコラムでは、企業におけるWindows 7移行の課題、取り組み方などについて述べます。
■Windows XP時代の終焉
Windows XPのパッケージ販売、OEM提供、メインストリームサポートは既に終了しています。2014年には延長サポートが終了し、有償・無償サポート、セキュリティプログラム提供は行われなくなる予定です。また、今後はWindows XPに対応するソフトウェア、ハードウェアが減っていくことが予想されます。
2010年7月にOEM版Windows 7 Professional以上に付随する「ダウングレード権」の提供期限が延長され、Windows XPへのダウングレードは2020年まで可能となりましたが、セキュリティのリスク、対応ソフトウェア、ハードウェアの減少といったことを考えれば、2014年以降のWindows XPの使用は仮想化環境や社内LAN限定などの限られたものになるでしょう。
■Windows 7の導入状況
各種調査報告によれば、2011年前半、企業が保有するクライアントPCは依然としてWindows XPが多数を占めているそうですが、2012年12月までには65%の企業がWindows 7への移行を予定しているとのアンケート調査結果もあり、今後、Windows 7への移行は急速に進むことが予想されます。
Windows Vistaへの移行を差し控えたことによりクライアントPCの老朽化が進んでおり、今後の入れ替えにおいてWindows 7を選択せざるを得ないことも、移行の動きに拍車を掛けると考えられます。
■課題
しかし、Windows 7移行に際しては解決しなくてはいけないいくつかの課題があります。大別すると以下の3点になります。
・ ソフトウェア、ハードウェアの互換性調査、及び、非互換対応
現在のソフト、ハードが正常に動作するのか。その調査と対応。
・ 各種データ、各種設定の移行調査、対応
現在使用しているデータやメール、各種設定は移行出来るのか。その調査と対応。
・ PC管理方法、PC操作方法変更への対応
Windows 7に考慮したPC管理方法の再構築、運用管理部門の教育。
OSやソフトウェアの操作性変更に対するユーザー教育。
最も大きな課題は、ソフトウェア、ハードウェアの互換性調査と非互換対応です。
Windows XPと7ではAPI、フォルダ構造、ユーザーアカウント制御などが変更されているため、パッケージソフトウェアや企業が独自で開発したアプリケーションは正常に動作しない可能性があるのです。企業が保有する約60~80%のアプリケーションに対してなんらかの作業が必要となるというレポートもあります。
一例ですが、最も使用頻度の高いWebブラウザ、オフィスソフトについても以下の問題が指摘されています。
・ Internet Explorer6/7がインストールできない。
・ Microsoft Office XP(SP3)より前のバージョンは動作保障されない。
これらに合わせて開発したWebアプリケーションやマクロは、Windows 7上のInternet Explorer8/9や新バージョンのOfficeでは正常に動作しない可能性があります。
ハードウェアについては、比較的新しいものはWindows 7対応ドライバが提供されますが、古いものや製造・販売元などのサポートが無くなったものについては対応ドライバが提供されず、Windows 7では使えない可能性があります。
これらについて調査を行い、対応を実施していく必要があるのです。
■どのように取り組めばよいのか
主に必要な取り組みについて、解説します。
<ソフトウェア、ハードウェア資産の洗い出し>
まず、PCに関わるソフトウェア、ハードウェアの資産を漏れなく洗い出します。部署や個人によって使用しているソフトウェア、ハードウェアが異なる場合もありますから、社内全体を調査します。
それから、これらの資産について「使用されているか」「今後も必要か」「もっと良い方法、安価な手段はないか」といったことを検討するとよいでしょう。Windows 7移行を資産整理、業務改善、コスト削減の機会として捉えるのです。
<パッケージソフトへの対応>
パッケージソフトについては、まず「Windows 7での動作保障、サポート」があるかを確認します。それが無い場合、「同製品のバージョンアップ」「代替可能な別製品への切り替え」「動作確認を行い、サポートなしでも使い続ける」といった手段をコストや手間、重要性に応じて検討します。
<独自アプリケーションやパッケージの追加開発機能>
独自アプリケーションやパッケージの追加開発機能については、外部による保障はありませんので動作確認が必須です。機能を一通りテストする必要がありますので、アプリケーションの規模が大きければ相応の期間と工数がかかります。ITベンダーに対応を依頼した場合、機能調査、テスト計画・実施、修正などで高額な見積を提示されることもあります。社内にそのアプリケーションを熟知している要員がいない場合、そちらのほうが安全で、結果的には安く付くでしょう。ただし、無駄な対応を行っていないか精査する必要があります。
■Windows XP を使い続けられないのか?
仮想化によりWindows XPを使い続ける、また、アプリケーション自体を仮想化するという手法もありますが、導入・保守にはそれなりのコストが掛かります。クライアントPC数やアプリケーション数が多いのであればスケールメリットがありますので、他の対応方法とメリット・デメリットを比較・検討するとよいでしょう。
ハードウェアについては、「接続手段があるか」「ドライバが存在するか」を確認します。それらが無ければそのハードウェアは使用できませんので、同等能を持つ別製品に買い替えるか、代替手段を検討します。
上記の互換性対応以外にPC自体の移行や社員教育を計画・実施する必要があり、クライアントPC数やソフトウェアの数によっては相当な手間と期間が掛かることが想定されます。まだWindows 7への移行を検討されていないのであれば、計画だけでも早目に着手されることをお勧めします。
2011年05月01日 (日)
青山システムコンサルティング株式会社