ベンダーは高いシステムを売りたがる | 業務効率UP+収益力UP 中小企業のシステム改革 | 青山システムコンサルティング株式会社

TEL:03-3513-7830|お問い合わせ

2015年に出版した
『業務効率UP+収益力UP 中小企業のシステム改革』幻冬舎 (2015/9/18) より
書籍内のコンテンツをタイトルごとに公開いたします。
コンテンツの最後に、コンサルタントのコメントを追加しておりますので、合わせてご覧ください。


P.67~

第2章 場当たり的なシステム改修は、お金と業務の「ムダ」しか生み出さない

ベンダーは高いシステムを売りたがる

中小企業の場合は、システムインテグレーターではなく、直接システム・ベンダーと交渉して、システム導入をはかるところも多いでしょう。

その場合でも、注意すべきなのは、システム・ベンダーの言いなりにならないことです。

ベンダーの言いなりにシステムを導入したために、使い勝手が悪く、何をするにもお金のかかるシステムになってしまった例もあります。

その理由は、ベンダー企業とユーザー企業とのニーズのズレにあります。

ベンダー企業が売る側で、ユーザー企業が買う側である以上、ベンダーはできるだけ高価なシステムを買ってほしいと考えています。

もちろん、ベンダー企業もビジネスですから、ユーザー企業をだまして自社の信用を失いたいとは思っていません。基本的には、ユーザー企業にとって最も良い選択肢を提供したいとは考えています。

しかし、ユーザー企業にとって何が最も良いのかが、ベンダー企業には見えていないことが多いのです。

なぜかといえば、ベンダー企業は基本的に、自社の製品(パッケージ・ソフトウェア)のことしか知らないからです。たとえ知っていたとしても、自社で扱いのない製品をすすめるわけがありません。ですから、基本的にベンダー企業は自社製品の良さを宣伝するのですが、それがユーザー企業にとって本当にベストな製品とは限りません。

本来、何らかのモノを購入するときには、それがITシステムであれ、工作機械であれ、

さまざまなメーカーの製品を比較するのが当たり前です。しかし、ITシステムに慣れていない中小企業は、システムなんてどこに頼んでも同じだろうとばかりに、1?2社程度しか比較をしません。

基本は「三社見積り二社購買」の原則を守ることです。

「三社見積り二社購買」とは、見積りは最低でも三社以上からとって競争をさせるとともに、最終的にはそのうちの二社に分担して発注することで、一社依存による牽制機能低下のリスクを下げることです。パッケージ・ソフトウェアの場合は、二社に分担して発注することはできませんが、ハードウェアや別のソフトウェアなどを他の会社に発注することで、取引のリスクヘッジになります。

もちろん、二社に分担して発注するよりも、一社に大量発注したほうが、価格を下げることができるかもしれません。日本では長年続いた不況のせいで、企業にコストダウンの圧力が高まり「二社購買」の原則をないがしろにする企業も出てきました。

ところが、2011年の東日本大震災のときに、被災地にある一社だけに仕入れを頼っていた企業は、軒並み業務がストップしてしまいました。コストを優先することも大切ですが、企業として常に社会にモノを供給することを考えていくのであれば、やはり「二社購買」によるリスクヘッジは必要です。

「二社購買」はともかく、大切なのは「三社見積り」です。

価格だけでなく、ユーザー企業にとっての使い勝手や信頼性などを判断するためには、複数の会社から見積りを取って比較検討することが欠かせません。

とはいえ、知識が十分でなければ、ITシステムの比較検討は難しいことでしょう。

そこで、必要になるのが、ユーザーの代理人(エージェント)となって、アドバイスをしてくれたり、メーカーやベンダーの監視をしてくれたりする第三者の存在です。システムインテグレーターを間に入れれば、基本的にはすべての責任をとってくれますが、中小企業にはコスト負担が重いでしょう。そこでおすすめなのが、メーカーやベンダーに依存していない、独立系のシステムコンサルタントを参加させることです。

独立系のシステムコンサルタントとは、ユーザー企業の視線に立って、本当に必要なのはどのようなシステムかを公正中立な立場で助言してくれる人です。

場合によっては「御社は今のままのシステムでOKです」とか「新しいシステムを入れなくても、エクセルで業務を回すことができます」などと、提案できるのが理想的なシステムコンサルタントです。

ITコンサルタントのコメント(2022年3月28日)

「三社見積り二社購買」は現在でも重要な購買原則です。製品やサービスごとの長所と短所を知ることができますし、ベンダーへの交渉力を得るための有効な手段となるでしょう。ただし、形式的な取り組みにならないように注意しなければなりません。

何かを選定するためには評価基準が必要です。また、選定者間で評価基準の元となる理想像やビジョンが共有されていなければなりません。そうでなければ、選定者個々人の見解で判断することになり、評価内容に統一性がなくなります。

つまり、三社見積りを効果的に行うためには「自社システムのビジョン」を明確に描くことが大前提となります。ビジョンに適した評価基準がないままに比較をしたとしても、自社に合う製品を選定することはできません。また、システムベンダーも漠然とした要望を包括するような高価なシステムを提案せざるをえないでしょう。

自社のビジョンを明確に描き、システムベンダーへの要望を適格に提示できるようになれば、自ずと適正な製品と見積りを提示してもらえるでしょう。その上で、「三社見積り二社購買」に取り組むことを推奨します。


(次のコンテンツ) »
もくじ
« (前のコンテンツ)