2015年に出版した
『業務効率UP+収益力UP 中小企業のシステム改革』幻冬舎 (2015/9/18) より
書籍内のコンテンツをタイトルごとに公開いたします。
コンテンツの最後に、コンサルタントのコメントを追加しておりますので、合わせてご覧ください。
P.95~
第3章 ベンダー任せにするな。改修の成否は「業務プロセス」の徹底的な洗い出しで9割決まる
「戦略性」「業務合理性」「技術適合性」「コスト適切性」の4点から課題を洗い出す
前章までは、ITシステムの導入が難しい理由を見てきました。
では、ITシステムの更新を考えたときには、いったいどのようにすればよいのでしょうか。
最初に考えるべきことは、本当にITシステムの入れ替えが必要かどうか、あるいは、ITシステムの刷新によってどれだけの効果が見込めるのかの診断です。
もちろん、皆さんの会社がITシステムの更新を考えているということは、何らかの問題や悩みを抱えていることは間違いないでしょう。
しかし、その悩みが既存のITシステム自体によるものなのか、それともオペレーションにあるのか、はたまた人の問題であるのかは、ただちに判断はできません。
そこで、まずはITシステムに関して、どのような悩みがあるのかをまとめてみましょう。
この本を手に取られた方は、おそらく次のような課題を抱えていることと思います。
- 経営者の視点から見て、ITシステムに効果があるかどうかわからない。
- 何らかの効果があることはわかるのだが、システムの維持に想像以上のコスト(費用)が発生しているので、十分な投資対効果(ROI:Return On Investment)が得られているかどうかわからない。
- ITシステムを導入したのはいいが、機能を使いこなせていない。
- 経営環境の変化に、ITシステムが追いつけず、使いにくいものになっている。
- ITシステムのTCO(Total Cost of Ownership:総保有コスト)を削減したいが、どのように進めたらよいか、わからない。
- 現在のITシステムを、あと何年間使い続けられるのか不安である。
これらの悩みは、おおむね以下の四つに分類することができます。
- 戦略性
経営戦略、経営計画、業績評価制度、利益管理制度といった経営の側面から、ITシステムが適合・貢献しているか。 - 業務合理性
ビジネスを遂行していくための業務プロセスに注目して、現在のITシステムを使った業務プロセスが最適化されているか。 - 技術適合性
現在稼働中のシステムは、ITの技術的な側面に関して問題がないか。 - TCO(総保有コスト)適切性
ITシステム投資費用が、ビジネス内容や規模、IT投資に関する方針・戦略に合っているか、ムダな投資をしていないか。
以上の四つの観点から見て、一つ以上の問題がある場合には、ITシステムの刷新によって解決する可能性が高いです。
中でも、ほとんどの中小企業に共通する最も大きな問題が、「業務合理性」に関するものです。「業務合理性」の問題さえ解決していれば、そのITシステムは7割方合格と言えるでしょう。
ITコンサルタントのコメント(2022年06月27日)
ITシステムの刷新においても、クラウドファースト(クラウド バイ デフォルト)が謳われる時代になりましたが、「戦略性」「業務合理性」「技術適合性」「コスト」という観点が重要なのは変わりません。
※クラウドシステムは「所有」せずに「利用」するだけですので、従来のTCO(総保有コスト)という観点ではなく「総利用コスト」として把握すべきである等、具体的におさえるべきポイントに変化する部分はあります。
新たな技術、新たなサービスが続々と登場しているなか、クラウドサービスの活用等でITシステムの「総利用コスト」を大幅に下げられるケースも出てきています。
また、パッケージ製品やクラウドサービスで提供されているITシステムで想定されている業務プロセスは、汎用的に使えるように作られているのでベストプラクティスである可能性も高いです。そのため、業務プロセスをITシステムに適合させていくことで「業務合理性」に寄与できる場面もあります。
ITシステムの刷新を検討するにあたっては、最新の技術、製品・サービスを理解し、自社に活用できるものがないか検討してみてはいかがでしょうか。