ITによる将棋の面白さの進化2

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2年前のつぶやきで、ITの進化によって、将棋に詳しくない人へ将棋の面白さを伝えられるようになったことを紹介しました。
(https://www.asckk.co.jp/archives/column/60-2009)
今回は将棋を指す人が感じられる「ITによる将棋の面白さの進化」を紹介します。

将棋の初手は、一般的には角道を開ける歩か飛車先の歩を付く2通りですが、ルール上で指せる手は30通りあります。
初手だけでも30通りある指し手を局面に応じて全て演算すると、当然ながら膨大な組み合わせになってしまいます。
そのため、将棋ソフトは独自の評価関数を持って局面を評価することで、演算量を削減しています。
将棋ソフトの「Ponanza」は、機械学習、特に強化学習という技術で名人に勝利するほどのプログラムになりました。

将棋ソフトが精度高くかつ短時間で局面を評価できるようになったことで、以前より効果的に将棋の勉強ができるようになりました。
具体的には、次の対局に向けて戦略を練るために、自分の構想を将棋ソフトで評価することで、好手(良い手)か悪手かがすぐに分かるようになりました。
また、対局後の感想戦と呼ばれる振り返りの代わりに、自分の棋譜を将棋ソフトで分析できるようになりました。
これらの将棋ソフトの手助けにより、独力での勉強効果が高まりました。

将棋ソフトの強化は、上達の手助けだけでなく、将棋の可能性を広げています。
例えば、elmoという将棋ソフトが多用した囲い(elmo囲いと呼ばれています)は、その優秀さが評価されプロ棋士も公式戦で採用しています。

elmo囲い

elmo囲いは、今まで一度も指されていなかったわけではありませんが、将棋をよく知る人ほど、指しにくい囲いだったと思います。
指しにくかった理由はいくつかありますが、一例として囲いの発展が挙げられます。
elmo囲いは、自分が居飛車で相手が振り飛車の戦型で、主に急戦(王将を堅く囲わない戦い)で利用する囲いです。
その戦型では、舟囲いと呼ばれる囲いが一般的で、戦型に応じて持久戦用の囲いに発展させることができます。
一方でelmo囲いは発展できる既存の囲いはなく、戦型に応じて囲いを変化させることは難しいと言えます。
そのような、少し指しにくいelmo囲いですが、実際にその囲いにすると、金銀が連結している美しさや王将の逃げ道が上手く確保されているなど、有力な囲いと思えます。
人間では指しにくい囲いを将棋ソフトが提案してきたと言って良いでしょう。

今後もITによって将棋がより魅力的になることを願っています。
私個人としては、かつての藤井猛棋士が考案した藤井システムのように、elmo戦法やPonanza戦法といった、新たな戦法が考案されることを期待しています。

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2022年11月14日 (月)
青山システムコンサルティング株式会社
久保田一樹