その日本語ちゃんと通じてますか?

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 システム開発に関する仕事をしていると、たくさんのアルファベット・カタカナ用語が飛び交う場面に遭遇することがよくあります。

 API、DB、SQL、DNS、IPS・・・etc
 アジャイル、モジュール、デプロイ、ゼロトラスト・・・etc

 例をあげればキリがないほど、この分野における専門用語は数多く、また技術の進歩とともに増えていく一方です。しかし、いまだユーザー企業の中にはこうした用語にアレルギー反応を起こす方も少なくないのではないでしょうか。私の知人の中には、こうした用語が飛び交う会議に出たところ「外国語の会議の方がまだ付いていける」と漏らす人もいました。システムの現場ではどうしても、そうした「チンプンカンプンな横文字用語」が多くなってしまいます。

 しかしながら、私はむしろ「何となく通じている日本語」の方にこそ危険が潜んでいると感じることがしばしばあります。「分からない」ことをはっきりと自覚していれば、能動的に調べたり、学習したり、(或いは思い切ってあきらめたり?)といった行動につながりやすいですが、「何となく通じている日本語」については、各人が自身の知識や経験に基づいて解釈できる余地があり、その明確な定義をおざなりにしてしまいがちです。

 例えば、システム開発の工程としてよく出てくる名称に以下のようなものがあります。

 「要求分析」「要件定義」「設計」「結合テスト」「統合テスト」「運用テスト」・・・etc

 これらがどんな作業を意味するのか、システム開発に関わった方であれば誰しもが「何となくは分かる」かもしれませんが、実際には何をどこまでカバーする作業なのかはプロジェクトによって変わってきます。また、同じ作業でも企業によって異なる工程名称を使いますし、ユーザー企業においては、さらに部門や立場によって、それぞれ持っているイメージが異なっていることがあるのではないでしょうか。

 このように言葉に対して明確に定義付けすることを意識しなかったため、実施されると思っていた作業が「まだ実施されていなかった」「そもそも実施される予定になっていなかった」といった事態に直面し、計画の変更を余儀なくされたり、トラブルに発展してしまった、という話は案外多いものです。

 私の経験をひとつ紹介します。その昔、物流システムの開発に関する複数社が参加する会議で、「ロケーション」という言葉について、ある人は物流施設の立地のことを、ある人は物流施設内のエリアのことを、ある人は物流施設内に設置した棚のことをイメージしていて、話が噛み合わなかったことがあります。それをきっかけに「移動」「振替」・・・など、それまでお互い何気なしに使っていた言葉の整理を始めたところ、大小様々なギャップがあることが分かりました。幸いプロジェクトの初期段階でそれらのギャップを埋めることができたので大した影響はありませんでしたが、その活動がなければプロジェクトのどこかで遅かれ早かれ大きな手戻りが発生していたと思います。このように一見簡単な言葉でも、バックグラウンドが異なれば認識のギャップは発生しうるのだと感じた印象的な出来事でした。

 システム開発はその特性上、複数の企業、部門・組織が参画するケースがほとんどです。バックグラウンドの違いがあることを当たり前のことと踏まえ、何気なしに使われている言葉を具体化する一歩踏み込んだコミュニケーションを意識するだけで、プロジェクトの質は向上するものと考えます。

 私たち ITコンサルタントは、冒頭に記載したような専門用語の翻訳者であるとともに、バックグラウンドが異なる者同士のコミュニケーションの潤滑油としての役割も担っています。僅かなミスコミュニケーションが大きなトラブルに発展しかねないシステム開発プロジェクトにおいて、リスクを極小化してより質の高いシステムを作っていくために、私たちも貢献していきたいと思います。

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2022年01月17日 (月)
青山システムコンサルティング株式会社
近藤直樹