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データ分析は数値に基づいた意思決定の支えになります。仮説を立て、多角的な切り口から物事を捉えられることは勘や経験のみから判断することに勝るでしょう。ただし、分析に主観が入り込むと結論が歪んでしまうことがあります。皆さんには仮説に囚われ、自分の都合のよいデータのみを集めた経験はないでしょうか?
以前、とある企業のweb広告検討会で以下のような発言を耳にしました。
「広告Aを実施すべきだ。広告Aは顧客アンケートにより購入希望者が多いという結果がでている。また、表1の分析結果から分かるように、新規顧客と既存顧客ともに広告Bの顧客単価を上回っている。」
このように、ABテストの結果から広告Aを採用しようとしていました。
表1 購入平均単価
表1のように顧客を「新規顧客」と「既存顧客」にセグメントして、それぞれの顧客単価を集計すると広告Aは広告Bを上回る結果です。しかし、顧客をセグメントせずに購入者全体の平均を伺ったところ、集計後に以下の回答がきました。
「全体の平均顧客単価は広告Aよりも広告Bの方が高いです。」
セグメントしたデータでは広告Aが優れていますが、顧客全体の平均購入単価では広告Bの方が優勢でした。
このケースで問題にしたいのは、広告AとBの優劣ではありません。広告Aを結論付ける前に、広告Bの利点も認知していたかどうかです。分析において大切なことは多角的な視点を持つことです。しかし、顧客アンケートの結果などから先入観を持ってしまうと、仮説が確信に近い状態になり、否定的な情報を無意識に避けてしまうことがあります。
このように、確信した仮説に対して都合のよい情報ばかりを無意識的に集めてしまう傾向を「確証バイアス」と言います。確証バイアスは認知バイアスの一種で人間が誰しも持ち合わせている心理傾向のことです。分析は仮説が正しいかを検証するために行いますが、確証バイアスによって、仮説を正とするためのツールとなってしまいます。
データ分析はものごとの断片を数値で示すことができるため、偏った分析であっても、もっともらしく見えてしまうことがあります。しかし、ものごとを様々な角度から捉えなければ、最適な意思決定の指標になることはないでしょう。もちろん、自身の仮説に対して批判的に向き合うことは簡単ではありません。分析前に評価基準を定めることや第三者目線を取り入れることで確証バイアスの対策をするようにしましょう。もし、社内での対策が難しい場合には、ITコンサルなどの外部の意見を取り入れることもしてみてはいかがでしょうか。
2023年03月20日 (月)
青山システムコンサルティング株式会社
高柳充希