2015年に出版した
『業務効率UP+収益力UP 中小企業のシステム改革』幻冬舎 (2015/9/18) より
書籍内のコンテンツをタイトルごとに公開いたします。
コンテンツの最後に、コンサルタントのコメントを追加しておりますので、合わせてご覧ください。
P.19~
第1章 ソフト更新、業務フロー変更 ── 絶え間なく見直しを迫られる社内システム
IT革命に乗り遅れまいと焦ってはならない
なぜ、ビジネスについてはプロフェッショナルであるはずの経営者が、ITシステムの導入については成否を見誤ることが多いのでしょうか。
その理由は、「IT」が専門知識を必要とする、技術問題であるからです。にもかかわらず、誰もが使えるとのイメージもあります。
経営者にとって「IT」とは、苦手だけれども決して無視できないもの、あるいは、わからないけれども素直にわからないと言えないものなのです。
その気持ちを最もよく表現しているのが「IT革命」という言葉です。
「革命」という言葉は、むやみやたらに使われるものではありません。「IT」が、ただ物事を便利にするというだけならば、それは「革命」ではありません。
「革命」とは、支配階級が入れ替わるなど、世界観がひっくり返るような出来事に使われる言葉です。
「IT革命」という言葉は、「IT」が、「産業革命」に匹敵するほどの社会の変化を引き起こしていることを意味します。
「IT」による変化に目をつむっていると、産業革命によって衰退した家内制手工業者のようになりかねないと、誰もが危機感を持っているのです。一昔前であれば「インターネットなんて見ない」「メールは信用できない」という中小企業経営者も少なくありませんでしたが、今やそんな人はめっきり見なくなってしまいました。
いやしくもビジネスをしているのであれば「IT」の変化についていかねばならないと、誰もが感じるようになってきたのです。
そのことを、何よりも熟知しているのは、IT業界の人たちです。
彼らは、「ITを利用しないと将来がないですよ」「これからはITの時代ですよ」「ITこそが日本の未来をつくります」などと、言葉巧みに中小企業の危機感を煽ります。
それが必ずしもビジネストークというわけではなく、IT業界の人は本気で信じているので、説得力もあります。彼らはITが好きで、ITの力を信じて、IT業界で働いているのですから、当然といえば当然です。
しかし、逆に中小企業の経営者にとっては、「IT」とは、わけがわからないままに、やたらと煽られるばかりのものです。「IT革命」に振り回された結果、つい焦燥的にITシステムを導入して、失敗してしまう方が後を絶ちません。
「IT」とは、たしかにビジネスにおける重要な要素の一つではありますが、本当に必要性を確かめて導入するのでなければ、役に立たないものにもなりがちです。
皆さんは、導入されたものの使われないSNSや、チャットシステムを見たことはないでしょうか。あるいは、ケータイやスマホの機能のうち、何%を実際に活用しているでしょうか。
「IT」とは、利用するものであって、利用されるものではありません。まずはIT業界の特性を知ることで、ITに対する免疫をつけていきましょう。
ITコンサルタントのコメント(2021年11月29日)
「IT革命」を「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」に置き換えて読んでみると、理解しやすいと思います。
IT業界の住人がカタカナやアルファベットの専門用語・略称を並べて、「危機感を煽る」場面は、執筆した2015年当初も現在(2021年)も変わりません。
ただし、ここ数年でも、業務のIT・システムへの依存度は、コロナ禍の影響もあり飛躍的に高くなりました。
IT・システムについて、「本当に必要性を確かめて導入する」ことは重要なことではありますが、あまりに慎重に取り組んでいると時代に取り残されてしまいそうです。
「IT・システムを活用して、どうできるか」と、積極的に考えるほうが、今の時代にはあっているかもしれません。