2015年に出版した
『業務効率UP+収益力UP 中小企業のシステム改革』幻冬舎 (2015/9/18) より
書籍内のコンテンツをタイトルごとに公開いたします。
コンテンツの最後に、コンサルタントのコメントを追加しておりますので、合わせてご覧ください。
P.22~
第1章 ソフト更新、業務フロー変更 ── 絶え間なく見直しを迫られる社内システム
IT業界で使われる言葉はなぜ難解なのか
IT業界には、やたらと新しい言葉を作りたがる文化があります。
たとえば「ウェアラブルデバイスでユビキタスコンピューティングが実現していますから、クラウドとビッグデータを使って、クロスチャネルマーケティングを行いましょう」のような言い方も普通に使われていますが、IT業界以外の人間にはわかりにくいことこのうえありません。
右記のセリフはまだいいほうで「ERPを利用してSCM改革の手法やツールとして、SCOR、CRT、LSCなどがあります」などと言われると、業界の人間でもすべてを理解するのが難しくなります。
このようなカタカナの専門用語、あるいはそれを縮めたアルファベット3文字単語が使われる理由は、顧客を脅して、危機感を煽ることだけが目的ではありません。
IT業界の立場から言えば、次々に登場する新しい技術や新しい概念に対しては、従来の言葉で説明することができないので新しい単語を作って当てはめるしかないのです。
しかし、中には明らかに、昔からある概念を、さも新しく見せるために言い換えただけだろうと思われるものもあります。
「新しい技術が出てきました!」と言えば、営業的に売りやすくなるために、新しい言葉を作っているのではないかと思われるふしもあります。
もっと簡単に言い換えられるために、作られたのはいいものの、そのまま使われなくなった言葉もあります。
たとえば、次にかかげる言葉は、いずれも20世紀(西暦2000年以前)に作られたものですが、皆さんはいくつ知っているでしょうか。また、それらの言葉の意味を初心者が理解できるように説明することができるでしょうか?
SIS、BPR、ERP、SFA、SCM、CTI、CRM、TCO、RAD、ISP、ASP、B2C、B2B……。
見たことがあるのに思い出せなくて気になってしまう方のために、一応、読み方を載せておきますと、それぞれ、次のような言葉になっています。わざわざ意味を知るほどのものではありません 。
- SIS(ストラテジック・インフォメーション・システム)
- BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)
- ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)
- SFA(セールス・フォース・オートメーション)
- SCM(サプライ・チェーン・マネジメント)
- CTI(コンピュータ・テレフォニー・インテグレーション)
- CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)
- TCO(トータル・コスト・オブ・オーナーシップ)
- RAD(ラピッド・アプリケーション・デベロップメント)
- ISP(インターネット・サービス・プロバイダ)
- ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)
- B2C(ビジネス・トゥー・カスタマー)
- B2B(ビジネス・トゥー・ビジネス)
これらの言葉の中には、ERPやBPRのように、流行語になったものもあります。というより、ITシステムを売るために、最初から流行語として普及させることを目的として作られたものもあると思います。
ITコンサルタントのコメント(2021年12月16日)
このような状況は現在も変わっていません。「DX」を筆頭に、枚挙にいとまがありません。
私が携わっているあるシステムはアマゾン社のAWSで稼働していますが、そこでも専門用語/略語/カタカナ(もしくは英語のまま)のオンパレードで、理解するために学習の毎日です。
幸い、今はインターネット上に用語解説が沢山あり、分からない言葉があってもすぐに調べることが可能です。
ご自分の関わる範囲で登場する用語だけでも、都度調べておきましょう。
会議中などで用語の使われ方に違和感を感じた場合は、その場でお互いの認識を確認してみましょう。
用語の意味を勘違いしたまま話が進んでしまうと、後で「こんなはずではなかった」ということになりかねないからです。
また、IT従業者は専門用語や略語で話しがちです。
IT従業者同士ならそれでもよいのですが、ITの専門家でも理解が大変な場合があるくらいですので、IT従事者がそうではない方々と会話をする際には、相手が理解できるように心がけて話をする必要があります。