2015年に出版した
『業務効率UP+収益力UP 中小企業のシステム改革』幻冬舎 (2015/9/18) より
書籍内のコンテンツをタイトルごとに公開いたします。
コンテンツの最後に、コンサルタントのコメントを追加しておりますので、合わせてご覧ください。
P.33~
第1章 ソフト更新、業務フロー変更 ── 絶え間なく見直しを迫られる社内システム
ソフトウェアメーカーが支配するオープンシステムの時代
2000年問題を機に、広く普及したのが、市販されているハードウェアに、汎用のソフトウェア・パッケージを載せたオープンシステムでした。特に、当時大々的に売り込みをかけて勢力を伸ばしたのが、ドイツのSAPやアメリカのオラクルによるERPシステムでした
ERPとは「Enterprise Resource Planning:企業資源計画」のことで、ヒト、モノ、カネに代表される経営資源を、企業全体で統一的に効率よく管理するためのITシステムです。
それまでの企業では、生産管理、販売管理、在庫管理、会計管理、人事管理、給与管理などが、それぞれ別々のシステムになっていました。それらを一体化して統合的に管理することで、経営資源をより有効に活用できるようになるとのキャッチフレーズが、多くの企業の心をとらえたのです。
また、大型汎用機(メインフレーム)によるシステムは、メーカー独自のハードウェアにオーダーメイドのソフトウェアを搭載するものであるため、市場原理による競争が働きにくく、非常に高価でした。しかし、オープンシステムでは、市販のハードウェアに、汎用的なソフトウェア・パッケージを載せて動かすものですから、従来に比べて安価であることも有利に働きました。
2000年問題をきっかけとして、企業にシステムの入れ替え圧力がかかったことと、ERPをはじめとするオープンシステムの流行によって、この時期に多くの企業がITシステムを刷新しました。
それまで、大事に使ってきたオリジナル開発のレガシーシステムという資産を捨てて、オープンシステムに乗り換えたのです。こうして、オープンシステムの時代が到来して、現在にまで続いています。
オープンシステムの特徴は、まずハードウェアによる差別化がなくなったことです。
パソコンにたとえて言えば、ソニー製でも東芝製でもパナソニック製でも、結局はWindowsの OS が動いていることと同じで、どのメーカーのハードウェアを選んでも、同
じようなIT システムを構築できるようになったのです。レノボ製でもデル製でもエイサー製でもよいとなれば、当然、価格競争力が働いて値段が下がります。ユーザー企業にとっては良い話でした。
また、レガシーシステムでは、選んだメーカーのハードウェアに合わせてプログラムをオーダーメイドで作らねばなりませんでしたが、オープンシステムでは違います。
会計管理や給与管理のシステムというものは、業種や業態が異なってもある程度は汎用的
に使えるものなので、あらかじめつくられたパッケージ・ソフトウェアが流通するようになりました。これも当然、オーダーメイドのシステムよりは圧倒的に安価になります。
ITコンサルタントのコメント(2021年12月30日)
オープンシステムの時代からさらに時代は変化し、いまやクラウドシステム利用が主となる時代になってきています。
民間はもちろんのこと、政府においても「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」において「クラウド・バイ・デフォルト原則」(クラウドサービスの利用を第一候補として検討すること)がうたわれ、クラウドシステムの利用は加速しています。
クラウドシステムでもオープンな流れは続き、オープンクラウドが提唱されています。
公開された標準規格に準拠し、オープンAPIでシステム間の連携をするような利用形態は、今後もますます増えていくでしょう。
特定のメーカーやSIerに依存するのではなく、ユーザー企業自身でクラウドシステムが活用できるようになると自社のDXにもスピーディーに活かせます。
その際にITコンサルタントに助言をもらうなども考えられますが、最終的に自社のビジネスにどう活かしていくかを考えるのはユーザー企業自身です。