場当たり的なシステム改修で運用に耐えられないシステムになる | 業務効率UP+収益力UP 中小企業のシステム改革 | 青山システムコンサルティング株式会社

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2015年に出版した
『業務効率UP+収益力UP 中小企業のシステム改革』幻冬舎 (2015/9/18) より
書籍内のコンテンツをタイトルごとに公開いたします。

コンテンツの最後に、コンサルタントのコメントを追加しておりますので、合わせてご覧ください。


P.60~

第2章 場当たり的なシステム改修は、お金と業務の「ムダ」しか生み出さない

場当たり的なシステム改修で運用に耐えられないシステムになる

ここまで、ITシステムへの理解の重要性を説いてきました。

これを読まれている経営者の方は、もしかすると自社のシステム担当者を責める気分になったかもしれません。

自社のシステムが使えないのは、担当者のせいだという意見には一理ありますが、私たちは経営者にも責任の一端はあると思います。

というのも、中小企業においてITシステムが良いものになっていない理由の一つとして、十分な予算がおりていないことが挙げられるからです。

ご存じのように、ITシステムはそれなりにお金のかかるものです。

そして、売上向上などの直接的な効果がどれだけ期待できるのかわからない以上、あまり多額を投資できないと考える気持ちもわかります。

しかし、一度に多額の予算を獲得できなかった結果、小さくて安いシステムを順番に導入して、その結果、データの連携が十分に取れず、使い勝手の悪いシステムで、無理やり業務をしている中小企業がたまに見られます。

そのような企業では、経営者自身がITシステムを軽視していることが多いのです。全社的に、かつ長期的に使うITシステムでは、経営者の考えに沿った長期的な計画が欠かせませんし、全社の業務を最適化するためには10年に一度でもいいので大がかりな投資が必要になります。

中小企業が、十分な予算をかけずに、必要な都度、場当たり的にシステムを開発してきたため、全体的な整合性のない、運用に耐えられないシステムになってしまったという例も散見します。その結果、すべてのシステムの再構築をせざるを得なくなり、かえってお金がかかってしまった例もあります。

ITシステムが、単に一部門の業務効率を改善するものであるのならば、必要な個所だけのシステム導入でもよいのかもしれません。しかし、システムに入力されたデータを分析し、経営に役立てようとするのであれば、できるだけ全社的なシステムであったほうがよいのは自明の理です。

業務効率化と、ひとくちに言っても、そこに経営視点があるかないかで、効率化の度合いが大きく異なってきます。もし、皆さんが経営者であるならば、ぜひITシステムの導入にかかわっていただきたいですし、経営者でないならばそのことを経営陣に伝えてあげてください。

すでに述べたように、システム化とは、単にITによる入出力と計算の話だけではありません。会社そのものをどのような仕組みによって動かしていくのか、どのような手順で業務を行うべきか、などといった、経営の根幹にかかわるものがシステムです。

私たちはシステムコンサルタントとして長年仕事をしてきていますが、単なるITシステムの導入だけで仕事が終わったことはほとんどありません。そもそも、クライアントの業務にとって、効率の良い仕事とはどのようなものか、あるいはビジネスに役立つ管理会計を行うためにはどのようなプロセスが必要なのかなど、業務事態に深くかかわった提案をしてきました。

システムコンサルタントと名乗ると「IT屋さんね」と軽く見られることが多いのですが、ありきたりの経営コンサルタントよりも、よほど経営にかかわり、なおかつ実行力のある提案をしてきたと自負しています。なぜならば、通常の経営コンサルタントは机上の提案しかできず、その後に実行するかしないかは企業任せですが、私たちの場合は、ITシステムという働き者を導入することで、実際に人が動かざるを得ない仕組みまでを作りあげるからです。

もし、皆さんが経営者であるのならば、全社的な業務効率向上のために、システムの導入に積極的に関与してみてください。

ITコンサルタントのコメント(2022年3月17日)

このコンテンツを要約すると、

  • 目先の課題解決で場当たり的にシステム導入せず全社的な業務効率向上を見据えるべきである
  • システム導入をシステム担当者に丸投げせずに経営者も関わるべきである
  • 業務効率化には経営視点が重要である

ということを言っています。

昨今、頻りに話題に上るDX(デジタル・トランスフォーメーション)についても非常に似通ったことが言えます。
経営者として世間を賑わすDXというワードに乗り遅れないように、DXの本質を理解しようともしないままシステム担当者に丸投げし
「我が社もDXを進めよ。何をやるかは任せる。」
と号令をかけてしまうと、システム担当者は何かそれっぽい流行りものをやらなければならないとまずいと思い、
「RPAを導入しました!(一部の手作業を自動化しただけ)」
「AIで販売データを分析できるようにしました!(分析結果を眺めてこれまで通りアナログに販売予測)」
ということにもなりかねません。

もちろん一部作業の自動化によりコストを下げることができたり、販売予測の精度が多少上がったりするかもしれませんが、経営に革新を起こすことはできません。逆にシステム導入費用の方が高くつき、
「システム担当者は何をやってるんだ!」
という悲惨な結果となる可能性も大いにあります。

DXプロジェクトにおいては経営者も参画し、経営戦略として例えば
「我が社は販売予測結果を使って在庫予測情報をリアルタイムで顧客に公開し、顧客側でも先々の購入予定が立てられるような新サービスを売りにしていきたい」
と方向性を打ち出した結果、システム担当者が
「AIでの販売データ分析結果を基幹システムの生産計画と連携し算出した在庫予測情報を、RPAを使って販売サイトに自動でアップロードできる流れを作れば実現できるかも」
のように具体策を検討すべきなのです。

今後もITと経営はこれまで以上に密接に結びついていくため、経営者もITの導入や改修には積極的に関与し、全社的な業務効率化・経営方針と整合性の取れたシステムを構築されることを切に願います。


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