2015年に出版した
『業務効率UP+収益力UP 中小企業のシステム改革』幻冬舎 (2015/9/18) より
書籍内のコンテンツをタイトルごとに公開いたします。
コンテンツの最後に、コンサルタントのコメントを追加しておりますので、合わせてご覧ください。
P.161~
第4章
「To Beモデル」のシステム構築&改修で、業務効率・収益力を向上させる
システムにおける技術的な問題も未解決のままだった
さらに、システム間の連携など、技術的な問題も未解決のまま残されていました。
K社のシステムは、現場のPC端末で操作するフロントエンドシステム(WindowsNTサーバー)と、メインフレームを用いた統合情報システム、同じくメインフレームを用いた財務会計システムの3種類を組み合わせたものでした。
しかし、それぞれハードウェアやOSなどのプラットフォームが異なることに加え、データはフロントエンドシステムから統合情報システムを経由して会計システムに送られるという、非常に冗長なシステムとなっていました。
これら、システム間の連携が不十分であったことが、システム障害の最大の原因であったと考えられます。
通常は、業務システムと会計システムの間で、直接インタフェースをとる方法が一般的ですが、K社ではその間に統合情報システムが挟まっていました。
また、工事台帳や売掛、買掛などの補助簿の管理機能は、会計システムにその機能がなければ、フロントエンドシステムに持たせるのが常識ですが、やはり統合情報システムを使用したために、使いにくいものになっていました。
さらに、データは、フロントエンドシステムから統合情報システムに送られるのですが、その結果が戻される仕組みはなく、メインフレームの端末がない各現場では、売上に対する入金情報や業者への支払い状況などを把握するすべがありませんでした。
統合情報システムと言いながら、現場の端末からはデータが参照できないシステム構成に対し、現場の社員の不満が募っていました。
問題は、そればかりではありません。
従来から使ってきたメインフレームには、暦年の売上や取引先などの過去のデータが大量に蓄積されていたものの、システムの改修に伴いデータの持ち方も改訂されており、過去のデータと最新のプログラムとの間で、整合性がとれていませんでした。
このため、現状の帳票作成プログラムでは過去データを出力することが困難となっていたのです。せっかくのデータも、出力ができないのでは宝の持ち腐れです。このままでは、株式の公開審査に必要なデータすら迅速に取り出せないリスクがあり、本来の目的である株式公開にも支障をきたすことが懸念されました。
ITコンサルタントのコメント(2022年11月25日)
前回までの話は、K社の会計業務と選定したパッケージシステムとの不適合の話でしたが、今回の話は、K社社内のシステム同士で起きている不適合だと言えます。各システムが担う機能の役割分担が不適切で、結果的にユーザーにとって使い勝手の悪いシステムになっています。
K社の状態は、システムの導入や機能追加が適切に行われてこなかった結果であると想像します。環境変化や社内ニーズに対応する際に、システム同士の関連など社内システム全体への考慮が足りなかったり、ときには本当に場当たり的な対応で、しっかりした検討もなく機能の継ぎ足しが繰り返し行われたりしていたのではないでしょうか。機能が追加されたその時はそれで良かったのでしょうが、気付いたときには、つぎはぎだらけの、いびつなシステムが出来上がっていたのです。
このような状態のシステムでは、機能の追加や変更の難度が上がり、身動きがとれなくなってしまいます。経済産業省のDXレポートに登場する、データの利活用や新たなIT投資を妨げる要因となる「レガシーシステム」とは正にこうしたシステムのことを指します。
ビジネスを行っている以上、突発的な案件、期間や予算に厳しい制約が課される案件が発生するのは避けられませんが、その後の打ち手は少しでも良いものにしておきたいです。例えば、現状をすぐに把握できる情報(資料)を整備しておく、というのも一つの手です。プロジェクトの立ち上げ期によく実施される「現状調査」という工程を短縮して、要件定義や基本設計により多くの時間をかけられるからです。継ぎ足しシステムの場合、現状把握もままならない、といったケースは少なくありません。現状の情報整理というと地味な作業という印象がありますが、いざという時を考えると、とても重要なことです。