在庫をシステムで管理しきれていない理由

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2015年に出版した
『業務効率UP+収益力UP 中小企業のシステム改革』幻冬舎 (2015/9/18) より
書籍内のコンテンツをタイトルごとに公開いたします。

コンテンツの最後に、コンサルタントのコメントを追加しておりますので、合わせてご覧ください。


P.197~

第4章
「To Beモデル」のシステム構築&改修で、業務効率・収益力を向上させる

在庫をシステムで管理しきれていない理由

従業員へのヒアリングを行ったところ、在庫が増えてしまうのには次のようなシステム上の問題があるからだとわかりました。

(1) 品番桁数が足りない
T社のシステムでは、品番桁数が不足しているため、色や素材の違いを入力して仕分けすることができませんでした。
そこで、色や素材を独自に記号化して、商品型番の後ろに付けるなどの工夫をしていましたが、部署や担当者ごとに品番を付けるルールが変わるなど、商品を品番だけで判別するのが困難な状況になっていました。
このため、習熟した作業者でないと在庫管理が十分にできないなどの問題が発生していました。

(2)持ち出しの売上と在庫更新が連動しない
持ち出した商品の売上入力を行った場合に、在庫が引き落とされず、別途手計算が必要になるなど、繁雑な処理になっていました。
そのため、直営店以外ではシステムでの持ち出し管理がなされず、システム上の在庫を信用できない要因となっていました。

(3)取り置き(在庫商品の確保)がシステムに反映されない
取り置きを行うときは、営業担当者が各自実際の商品に取り置き表を貼付することで管理していました。
このため、システム上では在庫があるように見えても、すでに取り置きの対象品になっていることがあり、実際の商品を確認しないと出荷ができません。このことも、システム上の在庫が信用できない原因となっていました。
また、取り置きを各担当者に任せていることで、管理が不十分になっていました。

(4) 端末が少ない
伝票入力や在庫確認用の端末数が限られており、それらの作業をしたいときでも、すぐにできない状況がしばしば発生していました。そのため、作業が後回しにされて、物の動きとシステム上の在庫が合わない一因となっていました。
さらに、業務手続きにおいても、在庫が増える原因となる問題をいくつか発見しました。

(5) 輸入商品はInvoice(送り状)だけでは色・素材が判断できない
インポート品では、Invoiceの内容だけでは色・素材が把握できないことがあります。商品が到着後に初めて品番の確定が可能となるのですが、商品は入荷後即出荷となることが多く、結局、確認ができないままの発送となります。
そのため、システム上の在庫と実在庫が合わなくなっていました。

(6) 商品部と経理部の仕入れ集計期間が異なる
商品部の担当者評価資料と、経理処理上の仕入れ集計期間が異なっていました。そのため、商品部では当月仕入れを翌月に回しているのに、経理処理上は当月で処理するなど、システム上の在庫金額に差異が発生しています。

(7) 交換などによる品番変更をシステムに反映していない
パッケージ交換などがあった場合に、品番も変更されますが、中身が同じであるため、システム上では同一としていました。
そのため、出荷された実際の商品の品番と、交換された品番の在庫数がシステム上で合わなくなり、システム上の在庫がおかしくなる原因となっていました。

(8) システムへの入力をまとめて行っている
効率化のため、伝票入力を一定の時期にまとめて行っていました。このため、システムへの入力と反映がリアルタイムで行われず、システム上の在庫が実在庫と合わなくなっていました。

以上のように、システムに起因する問題と、業務手続きに起因する問題の二種類が混じり合って、T社の在庫が減らない原因となっていたのです。
私たちのシステムコンサルティングでは、ITシステムはもちろん、業務上の手続きもまたシステム(仕組み)の一部と考えて、どちらもともに解決することを目指します。
ITシステム、あるいは業務上の手続きのどちらか片方だけを解決しても、もう片方に起因する問題が残っていては、問題の根本的な解決にはならないからです。

 

ITコンサルタントのコメント(2023年1月27日)

「ITシステムはもちろん、業務上の手続きもまたシステム(仕組み)の一部」
この一文が本項でもっともお伝えしたい点を要約しています。

“仕組み”は、ITシステムや業務上の手続き(プロセス)だけではなく、ITシステム・プロセス・人・組織、多くの要素で構成されています。
そして、企業が抱える「ITシステムの問題」は、「仕組みの問題」として取り組むべき問題であることがほとんどです。

「どちらか片方だけを解決しても、もう片方に起因する問題が残っていては、問題の根本的な解決にはならない」と書かれていますが、これは「すべての問題をITシステムで解決するのではなく、プロセスにより解決できる問題もある。」との意味も少なからず含んでいます。

ITシステムの問題としてしまったために、ITシステムを過剰にカスタマイズしてしまう・過剰に投資してしまう、といった事例は今も多く発生しています。
ITシステムだけでなく、プロセス・人・組織を含めた“仕組みの問題”として取り組むことが大切です。

そして、当社名(青山システムコンサルティング)の “システム” は “仕組み” の意味です。
(ITコンサルタントとシステムコンサルタントの違い)


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