2015年に出版した
『業務効率UP+収益力UP 中小企業のシステム改革』幻冬舎 (2015/9/18) より
書籍内のコンテンツをタイトルごとに公開いたします。
コンテンツの最後に、コンサルタントのコメントを追加しておりますので、合わせてご覧ください。
P.224~
第5章
業務の実態に合わせたシステム運用が、企業成長の絶対条件
システムは誰かに導入してもらうものではない
ITシステムは7〜10年というサイクルで必ず陳腐化します。
ですから、本書を手に取っている皆さんも、長い会社員人生のうちに、何度かシステムのリプレースを経験することになるでしょう。
ITシステムというものは、導入したらそれで終わりではなく、仕事に合わせて常にサポートやメンテナンスが必要です。また、組織の拡大や、事業の変化に合わせて、アップデートも続けていかねばなりません。
面倒くさいと言えば面倒くさいですし、お金がかかると言えばお金のかかるものです。
しかし、もし皆さんがITシステムに対してネガティブな気持ちを抱いてしまったとしたら、ちょっと立ち止まって考えてみてほしいのです。皆さんは何のためにシステムを導入するのでしょうか。もし皆さんが経営者であるならば、会社を成長させるためではないでしょうか。皆さんが経営者でないとしても、システムによって会社が変わると期待するところはあるのではないでしょうか。
私たちは会社経営というものは山登りのようなものであると考えています。
目標があって、それに向かって一歩一歩歩んでいくのは、まさに山登りと同じですし、一つの目標を達成しても、その向こうに別の山がそびえたっているのは、終わりのない会社の経営とよく似ています。
そして、同じ山に登るにしても、ルートはさまざまにあります。最短で頂上を目指せる効率の良い道もあれば、道に迷って獣道からうっかり下山してしまうこともあります。
どのような装備を持って、どのような道を通れば、最も効率良く頂上に到達することができるのか、それを手助けしてくれるのがシステムです。
良いシステムとは、軽くて履きやすい登山靴や通気性のいい登山服のようなものです。良いシステムを導入すれば、皆さんの山登りはぐっと楽になります。
そして、私たちシステムコンサルタントは、皆さんの山登りをお手伝いするシェルパだと考えています。
シェルパとは、ヒマラヤ登山の道案内や荷運びを行うネパールの少数民族です。エベレストの山岳ガイドとして世界的に有名です。
皆さんが世界でも最高峰の山に挑戦したいと考えているのであれば、ぜひ私たちシステムコンサルタントにお手伝いさせてください。それぞれの会社に合ったより良いシステムの提案をするのが私たちの喜びだからです。
しかし、一つだけ覚えておいてほしいことがあります。
私たちはいくらでも荷物を運びますし、道案内もしますし、一緒についていって食事も作りますが、皆さんを山頂まで運ぶことだけはできません。山に登るのであれば、皆さんは皆さんの足で歩いて行かなくてはなりません。そうでなければ、山に登ったことにはならないからです。
ときどき、システム導入の仕事を丸投げで請け負ってほしいという方が相談に訪れます。それでは本当の登山にはなりません。私たちが勝手に山頂に登ったところで、皆さんの会社は何も変わらないのではないでしょうか。どんなに私たちが深く入り込んだところで、しょせんはよそものです。皆さんの会社のことは、皆さんの会社の従業員でなければわかりません。ですから、やはり最後には、自分の足でしっかりと登ってほしいのです。
ITコンサルタントのコメント(2023年7月26日)
“システムによって会社が変わると期待する”時代から、今は“IT・システムを前提にビジネス設計する”(活用するかしないかを議論する余地はなく、活用することを“前提”にビジネス設計する)時代に変わりました。
IT・システムの重みが増したことに加え、デジタルネイティブ世代の人材も増えたことで、各社のIT人材は以前より随分と増えました。
では、 “自分の足でしっかりと登る人材”はどうでしょうか?
IT人材ほど増えていないと感じる方が多いのではないでしょうか。私自身も、相変わらず「ITは苦手」「システムのことはわからない」「システムのことはシステム部門に」といった声をよく耳にします。
“自分の足でしっかりと登る”ためには、私は以下が不可欠だと考えています。
① 高い当事者意識を持つこと(すべての行動判断の源流)
② IT・システムについて学ぶこと(知識がない=自分の足がない)
“IT・システムを前提にビジネス設計する時代”に変わった昨今も、コンプライアンス研修・ハラスメント研修・リーダーシップ研修といった研修を積極的に行う企業は増えましたが、①②の教育や文化醸成に積極的に取り組む企業はまだまだ少ないように感じます。
“システムは誰かに導入してもらうものではない”のと同様、“自分の足でしっかり登れる人材を育てることも誰かにしてもらうものではない”、と考えると良さそうです。
2021年11月から当社コンサルタントのコメントと共に公開してきました『業務効率UP+収益力UP 中小企業のシステム改革』は当コンテンツが最後です。
皆様、いかがでしたでしょうか?
本書が、皆様のお役に立つことを願っています。