コラムカテゴリー:プロジェクトマネジメント, 用語解説
1.OODA(ウーダ)ループとは
OODAループは、一言でいえば「迅速かつ最適な意思決定を行うためのフレームワーク」です。
アメリカの戦闘機パイロット・航空戦術家であるジョン・ボイド氏が考案しました。
ボイド氏は空戦においてどんなに不利な状況からでも40秒以内に敵機の背後を取ることが出来、「40秒ボイド」の異名を取りました。
その後も航空戦術の研究を進めましたが、その中核を成すのがOODAループです。
指揮官やパイロットのあるべき意思決定プロセスを分かりやすく理論化したものです。
戦争・戦闘で使う理論なのでは?とお思いの方もいらっしゃるでしょう。
成り立ちはそうですが、その後OODAループはビジネスや政治など様々な分野で導入され、あらゆる領域に適用できる一般理論として評価されています。
2.OODAループの考え方
OODAループでは、以下①~④の4つのプロセスで意思決定し行動を起こします。
①Observe(観察)
まずは現在の状況を客観的に観察します。
この段階では主観や仮説を交えてはいけません。
生のデータを収集し、事実を事実として見ます。
②Orient(状況判断、仮説立て)
観察した事実を基に、状況を認識し、さらには仮説を立てます。
「生のデータ」から「価値判断を含んだインフォメーション」を生成する段階です。
これにより次の意思決定が左右されるので、発案者のボイドはこのプロセスを特に重視していました。
③Decide(意思決定)
状況判断・仮説を基に、どのように行動するかを決めます。
具体的な方策・手段を選択し、必要であれば方針・計画を策定します。
④Act(行動)
意思決定に基づき、具体的な行動を起こします。
当然のことながら、行動すれば状況が変化します。
①’ Observe(観察) ④Actの結果を観察する
上記の行動の結果、つまり変化した状況を観察します。
そして、さらに②③④を実行します。
このようにループを回すことにより、より良い結果に繋げていきます。
3.OODAループの例
ではOODAループの例を見てみましょう。
<例1>
一つ目は私が関わったシステム障害対応の話です。
システム運用においては多かれ少なかれシステムの障害が発生します。
原因究明も大事ですが、復旧を優先して柔軟に対処することが求められます。
①Observe(観察)
突然、システムのレスポンスが遅くなり使用に耐えない状態となった。
データベースのデッドロック(※)が発生したため、大量のデータ更新が滞り、サーバーが高負荷になっている。
※デッドロックとは、処理Aと処理Bのデータベース更新要求がお互い待ち状態となり、どちらの処理も進まなくなってしまうこと。
↓
②Orient(状況判断、仮説立て)
デッドロックを取り除けば大量のデータ更新が処理され、システムの高負荷は解消すると思われる。
ただし、デッドロックを起こした処理はエラーとなるので、その対処が必要となる。
↓
③Decide(意思決定)
一部の処理のエラーよりシステム全体のレスポンスが復旧することの方が重要なので、デッドロックを取り除くことにする。
↓
④Act(行動)
デッドロックを取り除く。
↓
①Observe(観察)
デッドロックは取り除かれたが、大量のデータ更新は滞ったままであり、30分経っても解消が進まない。
利用者がまともにシステムを使えない状態が続いている。
↓
②Orient(状況判断、仮説立て)
データ更新が滞ったままなのは、デッドロック以外にも要因があり、このまま待っていても解消が進まないのではないか。
また、真の原因究明には時間がかかってしまうかもしれない。
↓
③Decide(意思決定)
これ以上のシステムスローダウンの継続は利用者への影響が大きくなるだけであり、データベースを再起動することにする。
↓
④Act(行動)
データベースを再起動する。
<例2>
二つ目は私が好きなデジタルカメラの話です。
近年、某社がクラシカルなデザインのミラーレス一眼デジカメを2機種発売し、そのどちらもヒット商品となりました。
想像ですが、その裏ではこんなOODAループが繰り返されたのではないでしょうか。
①Observe(観察)
若者の間でフイルムカメラが流行っている。特に見た目がクラシカルなものが売れている。
↓
②Orient(状況判断、仮説立て)
これまではデジカメを機能でグレード分けしてラインナップしてきたが、若者はカメラを映え・ファッションの一部と捉えており、機能よりも見た目重視で選ぶのではないか。
↓
③Decide(意思決定)
若者をターゲットに、安価でクラシカルなデジカメを企画・開発する。
↓
④Act(行動)
上記デジカメを発売する。
↓
①Observe(観察)
上記デジカメは若者だけではなく中高年のベテラン層にもよく売れた。
昔使っていたフイルムカメラに見た目と操作性が似ていると好評だった。
ただし、質感がプラスチッキーで安っぽいとの意見も多く聞かれた。
↓
②Orient(状況判断、仮説立て)
ベテラン層は自分の撮影用途に合わせてカメラを選択すると考えていたが、デザインと質感を重視する層が一定数いるのではないか。
↓
③Decide(意思決定)
ベテラン層をターゲットに、持つ喜びを満たすような金属製で質感が高いクラシカルなデジカメを企画・開発する。
↓
④Act(行動)
上記デジカメを発売する。
OODAループについて具体的なイメージが出来ましたでしょうか。
4.どのような場面で有効か
OODAループは、決まった工程が無い/常に状況が変化する業務、突発的なインシデントの対応などで効果を発揮します。
例えば、新規事業の立ち上げ、新商品/新サービスの開発、システム障害や災害時の対応などです。
現在は、IT利活用によりビジネスモデルの変革が容易となり、ビジネスシーンが刻々と変化しています。
また、新型コロナの大流行、急激な円安の進行、国際情勢の悪化など予期せぬ事態が次々と発生しており、将来を正確に見通すことが難しい状況です。
このような中、経営者はもちろん、個々のビジネスパーソンにもスピーディで柔軟な意思決定と行動が求められています。ゆっくりと考えていては取り残されてしまうからです。
OODAループはそのような時代背景にマッチしており、注目を集めています。
皆様もぜひOODAループを自分の業務で活用してみてください。
2024年12月14日 (土)
青山システムコンサルティング株式会社