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ERPをはじめとする業務パッケージシステム(以後、パッケージとする)を導入する際に

・機能は作ってもらったけど、結局使わなかった

・高価な機能だったけど、それほど効果がでてないような気がする

といったことがないように適切なFit & Gapは大切である。

とよく言われています。

 

 Fit & Gapは、パッケージの良さを引き出しながら、ユーザーがそのパッケージをうまく使いこなすために必要です。中堅中小企業でのパッケージ導入のプロジェクトでは、工程に関わらず、さまざまな場面で無意識にFit & Gap議論が行われています。

 適切な議論ができるようプロジェクトを進めることは非常に重要ですが、実はその議論がユーザーとベンダーの後々の信頼関係に大きく影響していることが多くあります。

 

私はいままで参画していた、軽微なカスタマイズが必要なパッケージ導入プロジェクトの数々の場面で

ユーザーに

 「その要望している機能は本当に今、必要ですか?」

 「その要求している機能の前提を教えてください」

と投げかけ、

ベンダーに

 「その機能の運用前提はどのような想定でしょうか?」

 「システム機能は、貴社が一番把握しているので、ユーザーの視点で運用回避案のご提案をお願いします」

と投げかけるシーンを多く作っていました。

決して追加要求や追加要望を否定したり、パッケージの機能不足や不完全さを指摘したりしているわけではありません。

 

 中堅中小企業でのパッケージ導入プロジェクトでは、多くのユーザーは導入予定のソフトが目の前で動作していないと日々の運用イメージが想定できないため、ベンダー選定時には考慮されていなかった要件や要望が湧き出てくることが多々あります。また、カスタマイズ要件定義フェーズでは出てこなかった追加要件が、受入テスト時に判明したりすることがよくあります。原因は、業務が人に依存していることが多く、担当者しかわからない業務範囲が存在するからです。

コニュニケーションをとりながら、ユーザーはパッケージソフトを、ベンダーはユーザーのビジネスを、お互いに理解を深め、追加要件や追加要望の対策を練っていく必要があります。

ユーザーは、ベンダーとの共通理解をすることは非常に大切です。時間が経つとパッケージソフトの特性を把握でき、運用回避策の検討や将来の追加要件のための開発規模の元となる情報の把握が容易にできるようになります。

 また、中堅中小企業のプロジェクトにおいて、「Fit & Gap(要件定義)の工程が完了したから、追加要件の対応はできません」といった、冷たく感じる対応をするベンダーがいます。確かに様々な制限事項から結論は「対応できない」となることが多くなります。しかし、そのような温度を感じない回答が積みあがるとユーザーには不信感が生まれます。対応できない理由を、真摯に説明し、ユーザーと一体になって課題解決へ共考することが大切です。そのプロセスが、ベンダーの評価を大きく左右します。特にシステム稼働プロジェクト時に発生したマイナスイメージは、追加開発フェーズや将来の更新時の交渉、保守金額の交渉などにいい影響を与えません。

 

ほとんどの中堅中小企業におけるシステム導入プロジェクトは、将来的に機能を強化する、稼働範囲を広げていく、などといった狙いを持っています。プロジェクトを通して適切なFit & Gap議論ができると、結果的にユーザーとベンダーの間に信頼関係を構築され、稼働後の適切な投資を誘発することになります。

適切な追加投資は、

 ユーザーはどんどん使いやすくなり、ベンダーへの信頼度が上がる

 ベンダーは継続的に受注をもらえ、ますますユーザーを理解し、真のパートナーに近づく

といった効果があります。

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2019年06月19日 (水)

青山システムコンサルティング株式会社

嶋田秀光