最近は働き方改革の実現を求める企業が多いためか、弊社のITコンサルティングで「ペーパーレス化の推進」がテーマによく挙がります。その中でも国税関係帳簿書類を電子化できる「電子帳簿保存法」に関心を寄せる企業は多いと感じます。
2017年の税制改正で大きく規制緩和され電子化のハードルが下がりましたが、2019年も更なる規制緩和の予定が公表されていました。
先月(2019年7月)に通達とQ&Aの改定内容が国税庁のホームページに公開され内容が明らかになりました。今回はいくつかの改定の中から大きく緩和されたポイントをご紹介します。
①入力等に係る期間制限に関する解釈の見直し
スキャナ保存要件には入力期間(書類受領から電子化するまでの期間)が定められていますが、「営業日」の期間に変更されました。
入力方式 |
変更前 |
変更後 |
早期入力方式 |
1週間以内 |
おおむね7営業日以内 |
業務処理サイクル方式 |
最長1ヵ月と7日以内 |
最長2ヵ月と7営業日以内 |
特に速やかに行う方式 |
3日以内 |
おおむね3営業日以内 |
これまでは休日も含めた期間だったためタイミングによっては非常に短期間での対応が必要とされましたが、営業日換算に変更されハードルが下がりました。また「業務処理サイクル方式」に関しては期間自体が大幅に長くなったのが大きな変更点です。
入力方式の違いの説明は割愛しますが、「早期入力方式」と「業務処理サイクル方式」を適用できるのは、書類(領収書等)の受領者本人以外が電子化する場合に限られることが注意点です。
②定期的な検査に関する解釈の見直し
スキャナ保存における定期検査の頻度を「全ての事業所を対象に1年に1回以上」と定められていましたが、「おおむね5年以内に全ての事業所」に緩和されました。拠点が多数ある企業では1年間で全事業所の定期検査を行うことは運用上難しいと予想されますが、今回は頻度が緩和され運用しやすくなりました。
ただし、定期検査は検査内容や頻度が電子帳簿保存法の要件を満たしていたとしても不正やミスを防止できなければ損害が生じるため、企業毎の事情に応じた検査内容、頻度で実施する必要があることが注意点です。
③事前相談体制の整備
これは制度改正ではありませんが、社内システムの法的要件の適合性を相談する窓口の体制が整備されました。
電子帳簿保存法は内容が曖昧で分かりにくいため、社内業務やシステムが法的要件を満たしているか判断が難しいケースが多いと予想されますが、これまで事前に相談できる受付窓口が十分にありませんでした。今回の体制整備により導入の実現性等、検討がしやすい状況になりました。
その他には以下のような改正点があります。(詳細は下記の国税庁ホームページをご参照ください)
- 電子帳簿保存法承認前の過去の重要書類も電子化が可能
- スキャナ保存で使用する市販ソフトウェアにおいて、JIIMA (日本文書情報マネジメント協会)で認証されたものであれば承認申請の簡略化が可能
- 電子ファイルの検索機能の条件として、書類の種類別の他に勘定科目別でも可能
- スキャンミスの取扱方法の明確化(ex.スキャナ画像の不備が署名漏れ等単純なミスで書類とデータの同一性が確認できる場合は再読み取り不要)
今回の規制緩和によりハードルが更に下がったので、これであれば運用可能と考える企業は増加すると予想されます。
実際検討を進めるとシステム費用やスキャン作業負荷等の課題は出てくると思いますが、保管コスト削減や業務効率化等メリットがあるので、改めて検討してはいかがでしょうか。
※国税庁の公開ページ
令和元年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要について
「電子帳簿保存法取扱通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)
⇒変更点はページ内の下記リンク
・電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類及び電子取引関係】(改正箇所抜粋)(PDFファイル/879KB)
・電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】(改正箇所抜粋)(PDFファイル/985KB)
※2017年の改正内容の解説
「電子帳簿保存法改正の変更点」(2017年の弊社コラム)
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2019年08月19日 (月)
青山システムコンサルティング株式会社