コラムカテゴリー:情報戦略/業務改革
一般的にデューデリジェンスとは、企業が他社の吸収合併や事業再編を行うときなど、果たして本当に適正な投資なのか、また投資する価値があるのかを判断するため、事前に詳細な調査を行うことを指します。一言で言えば企業価値の評価を行うことです。
ではシステムデューデリジェンスとは何かと言いますと、企業の持つ情報システムについての評価を行うことです。弊社では以下のようにシステムデューデリジェンスを行います。
<評価範囲>
・インフラ基盤(ハードウェア、ネットワークなど)
・ソフトウェア
・情報システム部門
・情報システムユーザー
・外部ベンダー
<評価内容>
1.システムの金額価値を評価
⇒ これにより、システム購入の投資額が適正であるかを判断できます
2.システムの機能、コスト、セキュリティ、活用状況、維持管理面を評価
⇒ これにより、事業への適応性や拡張性、追加投資の有無や金額、
リスクを認識し、投資の有用性を判断できます
■1.システムの金額価値を評価
情報システムの価値がいくらであるか、特にソフトウェア部分については評価が難しいところですが、以下のような算出方法が考えられます。
<A.製造原価法>
システム開発に要したコストを積み上げソフトウエアの製造原価を算出し、それを基にシステムの価値を評価します。大半は人件費と外注費です。
実際にかかったコストによる評価であり、財務的に最も正当と言えるでしょう。ただし、コストは必ずしもシステムの価値とリンクするものではありません。「あんなにお金をかけたのに、使い物にならないシステムになってしまった・・・」といった話はみなさんも耳にされたことがあるのではないでしょうか。
<B.回収期間法/正味現在価値法>
システム稼動に伴う営業利益を予測し、そこから、初期投資コストの回収希望期間における営業利益をシステムの価値とします。例えば、あるシステム稼動後の営業利益が初年2億円、2年目4億円、3年目5億円である予測したとします。このシステムの初期投資コストを最初の2年間で回収したいのであれば、「初期導入コスト ≦ 最初の2年間の営業利益額(2+4=5億円)」とする必要があります。
この方法はシステムの経済的価値を評価するため、投資側としては有用な判断基準となります。ただし、営業利益の予測に正確性があればの話です。予測が不確かであればリスクを伴う評価となります。
<C.ファンクションポイント(FP)法>
システムの機能規模をポイントに換算し、そこから金額価値を算出します。詳細は割愛しますが、システムの持つ全機能を洗い出し、それぞれに決まった基準でポイント付けします。その合計ポイントがシステムの機能規模を表すわけです。そこから、企業や業界団体が収集した係数を使用し、金額価値を算出します。(簡単な例: システム機能規模が500FPで、係数として1ポイント=10万円を適用した場合、このシステムの金額価値は500FP×10万円=5,000万円となります)
FP法の利点はシステムを客観的に計測できる点です。企業やIT業界団体の調査でもFPは指標として用いられています。ただし、FP計測にはシステムに関する知識、経験が必要となります。
上記のようにいずれの金額評価方法にも一長一短があります。その特性を理解した上で、ケースに合わせて使い分ける必要があります。
■2.システムの機能、コスト、セキュリティ、活用状況、維持管理面を評価
システムの金額価値の評価に留まらず、M&Aにより思い描く経営ビジョンの実現性を判断するためには、システムの事業への適応性や拡張性、追加投資の有無や金額、リスクなどを的確に評価する必要があります。
昨今、システムと企業経営・ビジネスは切っても切り離せない関係になってます。“ITシステムの装置産業”とも表現される証券会社などはその典型であり、ネット証券会社では情報システムの良し悪しがその企業の価値を左右すると言われます。
システムを軽視してM&Aを行った場合、システムがボトルネックとなり、M&Aにより期待されるビジョンの実現に思わぬブレーキがかかる場合があります。
<弊社のシステムデューデリジェンス事例>
弊社事例では、ある小売業者様が買収先企業の情報システムを活用して多店舗展開を検討されていましたが、弊社が調査した結果、買収先企業の情報システムの性能がそれ以上の店舗拡大に耐えられないことが発覚し、M&A後のビジョンである多店舗展開を実現するためには、予定外の情報システム改修とそのための追加投資が避けれらないことを事前に把握することができリスクを回避することができました。
経済環境のより一層の悪化が懸念されており、M&Aにおける判断ミス、それによる事業の停滞は命取りになりかねません。上記事例のようにシステムデューデリジェンスを行うことで、M&Aの調査過程でシステムに対する適正な評価を得ることができ、そこからよりリスクの少ない経営判断を行うことができるわけです。
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2006年02月20日 (月)
青山システムコンサルティング株式会社