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 「自社のITコストが適正である」と自信を持って言える経営者やIT管理責任者は、意外と少ないのではないでしょうか。一言にITコストと言っても、ネットワーク費用・データセンター費用・アプリケーションの開発/改修費用・サーバやアプリケーション保守費用・Saas等の外部サービス利用料と多岐に渡ります。業種や企業規模、及びどこまでをITコストに含めるかといった対象範囲により異なりますが、各種統計や自身のこれまでの経験では、おおよそ売上の0.5%~1.5%程度をITのコストに費やしている企業が多いようです。

企業としては、限られたITの予算を効果的に投資していく必要がありますが、IT部門だけで継続的に無駄なコストを削りつつITコストの適正化を図っていくのは困難であり、全社レベルで取り組むのが効果的です。全社レベルでIT投資の適正化を継続的に図っていくための方法の一つとして、「ITコストの配賦」があります。

ITコストの配賦とは、社内の情報システムに関わるコストを、システムを利用しているユーザ部門に負担させることを言いますが、これにより以下のような効果が期待できます。

(1)ユーザ部門にコスト意識を持たせ、非効率な投資を抑制できる
「豊富な機能を備えた見栄えのいいシステムを構築したが、それらの機能はほとんど使われていない・・・」こういったケースは多くの企業で経験した事があるのではないでしょうか。新規システム構築や機能改修の際に、コスト意識が乏しいユーザ部門からビジネス要件を収集すると、実際には必要性の低い要件まであげられることがあります。この時、IT部門が業務を熟知していて必要性を見きわめられればいいのですが、そのままシステム化した場合、開発コストが膨らみ、企業として非効率な投資を行ってしまう事になります。実際にシステムを利用するユーザ部門にコスト意識を浸透させることで、システム以外の代替手段の検討も行うようになり、非効率なIT投資を回避することができます。

(2)コストの構成要素が明確になる
複数の事業を展開している企業の場合は、各事業別のITコストの把握が可能となり、投資の判断もしやすくなります。IT部門では、「サーバ保守費は○○円でアプリケーション保守費は○○円」といったように“システム側の視点”でコストの構成要素を管理していたとしても、これだけではそのコストが適正かどうか判断するのが困難です。一方で、そのコストをユーザ部門に配賦し、各部門別に構成要素を把握することにより、事業の収益性や成長性を考慮したIT投資の意思決定がしやすくなります。

(3)IT部門のサービス品質が向上する
ITコストのユーザ部門への配賦は、サービスを提供する側のIT部門の強化にも繋がります。IT部門としてはユーザ部門へ提供しているITサービスの対価をユーザ部門から徴収しているわけですから、当然その対価に見合ったサービスを提供する必要が出てきます。Saas等の外部のサービスと比較してIT部門が提供しているITサービスが劣っている場合、IT部門が率先してサービス品質向上を図るようになるといった競争原理が機能し、ITサービスの品質向上が期待できます。

このように多くの効果が期待できるITコストの配賦ですが、具体的にどういった基準で配賦すべきでしょうか?

一般的には、ユーザ部門からの依頼によるシステム改修費用の発生要因が特定できるものはユーザ部門へ直接配賦し、ITインフラ等(データセンター利用料・サーバ保守料等)の共通コストは一定の基準に基づき配賦します。この時、配賦に用いる基準としては、売上高・ユーザ数・利用拠点数・伝票数・システム利用回数・トランザクション数・ディスク利用率・CPU利用率・サポートレベル等があげられます。

配賦の基準自体は、企業によりさまざまであり、どういった基準で配賦すべきといった答えは一つではありませんが、以下の3つのポイントは考慮すべきでしょう。

(1)ユーザ部門から見たわかりやすさ
できるだけ、CPU利用率等のシステム側の視点ではなく、利用回数やユーザ数等のユーザから見てわかりやすい基準で配賦し、ユーザ部門の理解を得られるようにする。

(2)配賦に必要となる情報収集の容易性
配賦に必要となる正確な情報が容易に収集できる基準で配賦する。

(3)システム特性の考慮
基幹システムは利用量に応じて配賦するが、情報系システムは利用量に関わらず固定的に配賦する等システムの特性に応じて配賦する。情報系システムは、固定のコストを配賦にすることにより、ユーザ部門により積極的に活用してもらえるような工夫をする。

今回は全社レベルでIT投資の適正化を図っていくための方法の一つとして、ITコストの配賦をご紹介させていただきました。決して新しいテーマではありませんが、「ユーザ部門のコスト意識が薄い」、「コスト配賦はしているものの機能していない」といった状況に直面している場合は、一度自社にあったコスト配賦のあり方を考えてみてはいかがでしょうか。

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2010年09月15日 (水)

青山システムコンサルティング株式会社

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